視覚障害学生のオンライン授業を支援する会
視覚障害のある学生のためのアクセシブルなオンライン講義
Accessible Online Lectures for Students with Visual Impairments
公開日:2020年4月10日
更新日:2021年3月21日
新(2021)年度に向けての注意喚起
新型コロナウイルス感染症の流行に翻弄された2020年度がようやく終わり、2021年度を迎えようとしています。現在も感染拡大が終息していない状況の中、新入生向けガイダンスや履修登録等をオンラインで行うご予定の大学もあるかと拝察いたします。2020年度は1カ月間ほど準備期間があったのに対し、2021年度は通常のスケジュールにてガイダンスや履修登録を予定しておられるのではないでしょうか。このような状況の中で、障害のある学生が誰一人取り残されることなく、情報の提供を受け、公平に授業等に参加できるための準備は出来ていますか? 特に、障害のある新入生は初めてのことが多く、戸惑いが大きいと思います。また、新年度のスケジュールに対応するためには、大学からの情報やオンラインシステムがアクセス可能なものである必要があります。このため、以下の事項についてご確認下さいますよう、お願い申し上げます。
- 障害学生の担当者の連絡先が障害のある学生に伝わっていて、確実な連絡方法が確立出来ていますか?
- 入学式、各種ガイダンス、シラバス等の情報は、障害のある学生がアクセス可能な形式で事前に提供できていますか?
- 履修登録を行うオンラインシステムのアクセシビリティは確保されていますか?
- 授業支援システム(LMS)等を変更した大学等は、事前に情報提供や練習等の機会を提供していますか?
現在、世界中で、新型コロナウイルス感染症の拡大が続いています。緊急事態宣言が出され、対象地域の大学では、キャンパスへの立ち入りが禁止されたところもあります。また、多くの大学がオンライン授業を表明しているところです。
移動に制限・制約のある視覚障害のある学生にとって、オンライン授業は、自宅等から授業に参加出来る点では、メリットがあります。しかし、オンライン授業を受けるためには、パソコンやタブレット等の利用方法、特に、音声や拡大等のアクセシビリティ機能を使いこなすICTスキルが必要になります。アクセシビリティ機能はパソコンやOSによって異なりますし、オンライン授業で利用されるソフトウェアやアプリによって利用方法が異なります。さらに、オンライン授業で提供されるコンテンツの中には、ビジュアルな説明に依存し過ぎたり、視認性が悪かったりするものもあります。
視覚障害のある学生に対して、ICTを活用した支援を行っている私達のところには、全国各地の視覚障害のある学生からオンライン授業に関する様々な相談が届いています。特に、緊急事態宣言の対象地域の大学に進学した新入生は、いきなり、オンラインでガイダンス等も受けなければならず、どうして良いかわからず、困っているようです。私達のところに相談があったケースについては、対応が出来ていますが、適切な専門家と出会うことが出来ていない視覚障害のある学生もいるかもしれません。そこで、私達は、視覚障害のある学生がオンライン授業にアクセスするための相談を受け付けたり、ノウハウを共有したりする活動を展開することにしました。
支援の対象は、オンライン授業に不安を感じている視覚障害のある学生の皆さんだけでなく、視覚障害学生を支援している障害学生支援室等のスタッフの皆さんや大学・学部・キャンパス等の責任者の皆さんも含みます。障害学生支援室での経験があっても、遠隔から、視覚障害のある学生にICT機器の使い方を指導したり、ZoomやWebex等のオンライン授業で利用されるソフトウェアやアプリ等の使い方の指導したりすることは簡単ではないと思います。また、視覚障害のある学生が履修する授業のアクセシビリティをどうすれば確保できるか、特に、講義等を担当する先生に、アクセシブルなコンテンツ作成をどのように依頼すれば良いか悩んでいる大学・学部・キャンパス等の管理責任者もおられるのではないかと思います。これら様々なニーズにお応えできるような活動を展開したいと考えています。
ホームページは逐次、更新していきますし、メールでの相談も受け付けます。オンライン授業が受けられなかったり、オンライン授業では自分の能力を発揮することができなかったりする視覚障害学生が一人もでないようにするために、ご協力をお願いいたします。なお、本会は、科学研究費補助金 基盤研究(A)「科学的根拠に基づいた視覚障害者のテスト・アコモデーションに関する実践的研究」(JSPS科研費 19H00623、研究代表者:中野泰志)、科学研究費補助金 基盤研究(B)「視覚障害者の円滑な大学進学を目指した高大連携システムの開発と評価」(JSPS科研費 18H01040、研究代表者:氏間和仁)、科学研究費補助金 基盤研究(C)「視覚に障害のある大学生の修学支援のあり方に関する実際的研究」(JSPS科研費 20K0317、研究代表者:小林秀之)のメンバーが発起人となり、これらの研究の一貫として実施しています。
文責:中野 泰志(「視覚障害学生のオンライン授業を支援する会」代表)
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緊急事態宣言が出された地域では、大学に行って相談することが出来ないケースもあり、不安に思っていたり、どうして良いかわからず、困っている人もいるのではないかと思います。また、ガイダンス等の説明会がすべてオンライン配信になってしまい、どうやってアクセスして良いかわからない人もいるかもしれません。私達は、オンラインでのガイダンスや講義等にアクセスできなくて困っている視覚障害のある学生の皆さんにとって必要だと考えられる情報をまとめて、提供しています。また、直接のご相談にも応じています。オンライン講義って何だかわからないから試してみたい、大学からオンライン授業の手引きが届いたけれどもアクセス出来なくて困っている等、自由にご相談ください。
オンライン講義とは、インターネットに接続されたパソコン等を使って受講する講義のことで、オンライン授業、遠隔授業、メディア授業等とも呼ばれます。オンライン講義と聞くと、自宅にいる学生が、教室にいる教員とテレビ電話を使ってリアルタイムでやりとりをする方法を想像する人が多いかもしれませんが、実は、いくつかの形態があります。以下、概要を説明します。なお、どのような種類のオンライン講義が展開されるかは、大学、学部、学年、担当教員、講義の内容、受講者数等によって異なるため、事前に確認する必要があります。
- オンライン講義の種類
オンライン講義は、大別すると、リアルタイム(同時双方向)型とオンデマンド型の2つの方式に分けられます。また、この2つの方式は、組み合わせて使われる場合もあります。
- リアルタイム型オンライン講義とは?
リアルタイム型は、対面での講義のように、教員と学生が同じ時間に、双方向でやりとりをしながら授業を展開する方式です。テレビ会議方式と呼ばれることもあります。対面での講義の場合、同じ場所に集まるわけですが、リアルタイム型オンライン講義では、それぞれが好きな場所で実施できます。対面での授業と同じように、授業中に、教員と学生が、お互いにやりとりを行うことがが可能ですし、質問の機会が確保されています。
- オンデマンド型オンライン講義とは?
オンデマンド型は、教員が用意した教材を、学生が自宅等で閲覧する方式です。インターネット配信方式と呼ばれることもあります。リアルタイム型と異なり、学生が教材をダウンロードし、各自が好きなときに閲覧することができます。教員が用意する教材には、①対面で行う授業をビデオに録画した動画ファイル、②解説を録音した音声ファイル、③解説付きの資料のPDF等のファイル等があります。オンデマンド型の場合、教員への質問や学生同士でのインタラクションは、メールやWeb会議システム等を用いて行われるのが一般的です。
- その他:混合方式
リアルタイム型とオンデマンド型を組み合わせて実施する場合もあります。
- オンライン授業における指導
リアルタイム型にしても、オンデマンド型にしても、対面における授業と同じように指導が行われます(大学設置基準という法律で定められています)。
- リアルタイム型オンライン講義における指導の受け方
リアルタイム型の場合には、教員からの指示にリアルタイムで応えたり、メールやファイルアップロードシステム等を使って授業後にリアクションペーパーやレポート等を提出することになります。質問がある場合には、メールや大学が用意している授業支援システム等を介して、やりとりが出来るようになっているのが一般的です。
- オンデマンド型オンライン講義における指導の受け方
オンデマンド型の場合には、ダウンロードした資料等に基づき、指示された設問や課題等に対して、動画、音声、レポート等をメールや授業支援システム等提出することになります。提出した回答やレポート等に対して、解答が示されたり、添削指導があったりします。。質問がある場合には、メールや大学が用意している授業支援システム等を介して、やりとりが出来るようになっているのが一般的です。
- オンライン授業のサンプル
オンライン授業の雰囲気をつかんでいただくために、サンプルの動画と資料を用意しました。なお、内容を見るためには、IDとパスワードが必要です。
オンライン講義では、対面での授業を動画や音声等で代替するだけでなく、教材の提供や課題の提出等が求められます。教材等のやり取りを行うのが、授業支援システムで、学習管理システム、Learning Management System (LMS)とも呼ばれています。多くの大学が導入しており、履修している科目ごとに教材を配布したり、課題を提出したりすることができ、教員と学生とのコミュニケーションを促進するソフトウェアです。授業をオンラインで実施するために、このサービスを利用する教員が増えることが予想されます。また、授業の実施方法に関する連絡も、授業支援システムを介してアナウンスされる可能性があります。
オンライン講義を受けるためには、ネットワーク環境、パソコンやタブレットPC等の端末、リアルタイム型オンライン講義用のアプリ(ソフトウェア)、音声や拡大等でPCにアクセスするためのシステム等が必要です。
遠隔での相談をする前に以下の点について確認していただくようお願いします。なお、以下の確認事項は、相談の前提となる環境整備ですが、これらが整備できていない場合にも、相談に応じます。特に、新入生や引っ越し等で、環境整備から行いたい場合には、遠慮なく、ご相談ください。
- 音声通話が出来る環境整備のお願い
支援の際、音声通話が必要になる場合があります。そのため、電話や通話アプリ(Line、Skype、FaceTime等)が出来る環境をご用意ください。なお、支援の際のやりとりに時間がかかることが予想されるため、料金が安い通話アプリをご用意ください。
- パソコンが利用出来る環境整備のお願い
オンラインでのミーティングや授業等は、タブレットやスマートフォンでも不可能ではありませんが、動画を扱う場合も少なくないため、パソコンの方が確実です。また、オンライン授業では、自宅学習が必要になるため、自分専用のパソコンがあった方が良いと思います。なお、パソコンを新規に購入する場合で、スクリーンリーダー等を選ぶ必要がある場合には、ご相談ください。
- ストレスのない速度で通信が出来る環境整備のお願い
オンライン講義では、動画が配信される場合もあるため、ある程度の速度の出るLAN環境が必要です。通信速度は、以下のようなアプリで確認出来ます。
- メールが出来る環境整備のお願い
オンラインでのミーティングや講義では、メールと連動して、情報が送られてくる場合があります。そのため、オンライン授業を受けるパソコンでメールが送受信出来る必要があります。
オンライン授業で利用するツールの使い方を教えてもらう際、自分のPCの画面を支援者と共有することが出来ると便利です。以下、支援者と自分のPCの画面を共有するための手順を示します。
オンライン講義のすべてを、スクリーンリーダーや画面拡大等を使って、他の学生とまったく同じように受けることは難しいかもしれません。そこで、重要な役割を果たすのが合理的配慮です。以下、合理的配慮の考え方やオンライン講義において、どのような依頼を検討すべきなのかについて紹介します。
- ICTが得意でない視覚障害者はどうすればいい?
オンライン授業で使用されるアプリの使い方を学んだけれども、スクリーンリーダーや画面拡大等では使いにくいと感じている人も多いかもしれません。特に、ICTがあまり得意ではない人の中には、他の学生と全く同じようにオンライン講義を受けることは無理だと感じていたり、大学で学びたかったのは、文学や経済学等の学問なのに、何でコンピュータの使い方でこんなに悩む必要があるんだと感じている人もいるかもしれません。スクリーンリーダーや画面拡大等を使いこなすことが不得意な視覚障害者は、とにかく、ICTの勉強をするしかないのでしょうか?
- ICTが使えれば、平等にオンライン授業にアクセスできるの?
オンライン授業で使用されるアプリは、必ずしも、障害のある人にとって、アクセシブルではなかったり、使いにくかったりするものが少なくありません。また、オンライン授業で提示される動画やスライド等の資料の中には、アクセスできないもの(例えば、代替テキストのない写真)や、わかりにくい表現(例えば、動画の中での指示代名詞を使った指示)等があります。特に、リアルタイム配信型のオンライン授業では、授業中に資料をダウンロードするように指示されたり、ショートテストが実施されたり、授業の最後にリアクションペーパーの提出が求められたりすることがあり、アクセスできたとしても、スピードが追いつかない場合もあります。つまり、ICTを使いこなすことができても、他の学生と同じようにアプリを使いこなしたり、同じスピードで資料にアクセスすることはできない場合があり得るわけです。このような状況は、平等なのでしょうか?
- 合理的配慮とは?
以上、例示してきたように、オンライン授業用のアプリが使いにくかったり、資料にアクセスできなかったり、スピードについていけなかったりする原因が、視覚障害のある学生への配慮不足である場合、代替措置等の合理的配慮を依頼することができます。この配慮の依頼は、「障害者の権利に関する条約」や「障害者差別解消法」に定められているものなので、遠慮する必要はありません。
合理的配慮とは「障害者が他の者と平等にすべての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないものをいう」と定義されています(「障害者の権利に関する条約」)。例えば、先生から、「来週から、Zoomというアプリを使って、授業をするので、それぞれ、マニュアルを読んで、Zoomの使い方を練習しておくように」と言われたとします。視覚に障害のない学生は、Webでマニュアルを探し、マニュアルを読みながら、友達や家族等と練習をすることが簡単にできます。しかし、視覚障害のある学生にとっては、通常のマニュアルを読んでも、スクリーンリーダーや画面拡大等を用いる場合の使い方は書いてないわけですし、Zoomを使いこなしている視覚障害者が身近にいるとは限らないので練習もできません。つまり、マニュアルを読んで練習しておくようにという指示は、視覚障害者にとって、他の者と平等とは言えない可能性があるわけです。もちろん、ICTが得意だったり、視覚障害の知り合いが多い人は、自分で解決策を探ることができるかもしれませんが、そうでない人は、大学に対して「必要かつ適当な変更及び調整」を依頼する必要が出てくるわけです。例えば、「スクリーンリーダーで、他の学生と同じようにZoomを使うためのマニュアルを用意してください。また、スクリーンリーダーでZoomの基本的な機能が使えるように、事前に練習をさせてください。」という依頼ができるわけです。この依頼内容が、他の者との平等にとって必要なものであり、大学にとって「均衡を失した又は過度の負担」でないと判断された場合、合理的配慮として提供されることになります。なお、大学にとって「均衡を失した又は過度の負担」になる場合には、代替案が求められたり、提示されたりした後、対話をしながら、合意を形成するのが一般的です。このように、他の者と同じように活動・参加できるように、必要な配慮を大学等に依頼した上で、より質の高い合理的配慮が得られるように、建設的な対話を繰り返し、合意形成を行うことが大切です。
- はじめに依頼ありき!
合理的配慮を受けるためには、大学等に配慮の依頼をする必要があります。「視覚障害者のための合理的配慮」というものがあるわけではありませんので、必要な配慮は、理由を付して、具体的に伝える必要があります。例えば、「Zoomのマニュアルにはスクリーンリーダーでどのようにアクセスすれば良いか記されていないので、スクリーンリーダーでアクセスできるようになるまで、操作方法を教えてください」というように、理由と配慮して欲しい内容を具体的に伝えることが大切です。
- 相談窓口を探す
配慮を依頼する際には、誰に相談するかが重要です。一人ひとりの先生にお願いする方法もあるかもしれませんが、障害学生支援室が設置されている場合は、まずは障害学生支援室等に相談に行くことをお薦めします。支援室が設置されていない場合は、学生担当の事務部門、担任・チューター等に相談してください。学内に適切な窓口がみつけられない場合には、日本学生支援機構・障害学生修学支援ネットワークの拠点校に相談するのも良いかもしれません。
- 最初から完璧を求めず、スパイラルアップで!
相談する際ですが、実は、授業担当者や障害学生支援室の支援者もオンライン講義が初めてでとまどっていることが多いと考えられます。初回から完璧な配慮を期待するのではなく、相談を重ねながら、配慮の改善を求める方法もあります。
- 配慮依頼の例(文責:中野・小林・相羽)
例えば、以下のような配慮依頼が考えられます。
以下、オンライン授業等の相談に応じてくれる機関を紹介します。
- NPO法人ゆに(文責:安田)
京都市を拠点に活動する「NPO法人ゆに」は、「障害学生支援のなんでも屋」として、障害のある学生の皆さんの学業や生活を支援している民間団体です。スタッフの安田は全盲で、PC-TalkerやJAWS、NVDA等の画面読み上げソフトを使って、キーボードでパソコンを操作しています。画面読み上げソフトを使いながらのパソコンの基本的な操作、メールのやり取り、WordやExcelの利用、大学等で使うオンライン授業のシステムの利用等、何か分からないことや困ったことがあれば、いつでもご相談ください。情報提供だけでなく、電話やLINE等を利用して遠隔で操作の練習等をご一緒することもできます。また、視覚障害学生が画面読み上げソフト等を利用して参加できるオンライン授業の方法や環境整備等、教職員の皆様からのご相談も歓迎します。
各大学等の状況を伺ったうえで、現実的な対応を一緒に検討したいと考えています。どんなに小さな、些細なことでもかまいませんので、どうぞお気軽にご連絡ください。
<連絡先>
NPO法人ゆに 事務局(担当:安田)
〒603-8354 京都市北区等持院西町60-10
Email: info@unikyoto.com
TEL: 075-468-1633(平日10時~18時)
FAX: 075-468-1666
URL: http://www.unikyoto.com/
※テレワークで不在のことがありますので、できるだけメールでご連絡ください。
- NVDAヘルプデスクのサポート(文責:NVDAヘルプデスク)
「NVDAヘルプデスク」は、オープンソースで無料の画面読み上げソフトのNVDAサポート窓口を開設し、NVDAのセットアップや使い方に関するサポートをしています。スクリーンリーダー操作に精通したスタッフや、点字ディスプレイやアドオンのサポート等に精通したスタッフも在籍しています。視覚障害当事者中心のサポート集団です。今回、NVDAヘルプデスクでは、新型コロナウイルスの拡大を受け、臨時サポートを行っています。NVDAに限らず、PC-TalkerやJAWS、またロービジョン者向けサポートについても適宜行っています。お問い合わせは以下よりお願いいたします。
<連絡先>
URL https://nhd.nvsupport.org
Eメール nhd@nvsupport.org
以下、オンライン授業を受けた体験記を紹介します。
オンライン授業を受けるためには、パソコンやタブレットのアクセシビリティ機能を使いこなす必要があります。以下、有用な情報を掲載しますので、ご覧ください。
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今回の緊急事態宣言でオンライン授業をせざるを得なくなった教員にとって、慣れないアプリ等を使いこなして、授業を実施することは大変だろうと思います。このような状況において、視覚障害に限らず、障害のある学生への配慮を行うことは、面倒に感じられるかもしれませんし、余裕がないので対応は困難だと考えられる先生もおられるかもしれません。特に、初めて視覚障害のある学生を担当する先生にとっては、緊急事態なので、対応できなくても仕方ないと考える先生もおられるかもしれません。しかし、障害のある学生への合理的配慮等の必要性は、「障害者の権利に関する条約」等の国際条約、「障害者差別解消法」等の法律に定められていますし、文部科学省・高等教育局で議論された「障害のある学生の修学支援に関する検討会」(第二次まとめ)等にも明記されています。また、「合理的配慮」の否定は、障害を理由とする差別に含まれるとされていることに留意する必要があります。非常時で、時間的な余裕もない中ですが、障害のある学生が、他の学生と同じようにオンライン授業に参加出来るようにご配慮をお願いします。このような状況の中で、公平な教育のチャンスが提供されることこそが、共生社会の実現には必要であり、それを支えられるのが、個々の教員の実践だとお考えいただけると幸いです。
学部等から障害のある学生への配慮の依頼が届いたら、可能な限り最大限、ご配慮いただくようお願いいたします。また、障害のある学生からより詳細な配慮について連絡がありましたら、対話を繰り返し、合意を形成していただきたいと思います。
- 合理的配慮とは?
合理的配慮とは「障害者が他の者と平等にすべての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないものをいう」と定義されています(2014年2月に日本において効力が発生した「障害者の権利に関する条約」による)。例えば、視覚障害のある学生から「動画で配信される映像を視覚的に確認することが出来ないので、スライドのテキストファイルを提供してください」という配慮の申し出があった場合について考えてみます。この要望は、視覚障害のある学生が「他の者と平等に」授業を受ける上で「必要かつ適当な変更及び調整」を求めていると考えられます。また、パワーポイント等で作成した資料からテキストファイルを作成することは、「均衡を失した又は過度の負担」と判断することは難しいと考えられるので、提供できるように努力していただきたい思います。
- 「均衡を失した又は過度の負担」とは?
上述の例に示したテキストファイルの作成は、忙しい自分にとって「過度の負担」だと考えられる先生もおられるかもしれません。しかし、合理的配慮の提供は、個々の教員の裁量で提供されるものではなく、法制度上、事業者、つまり、大学等に課せられた義務/努力義務(国公立大学では義務、私立大学では努力義務とされているが、東京都のように民間事業者にも条例で義務化している自治体では、すべての大学が義務)です。したがって、個々の教員では対応が出来ない場合には、各大学の担当部署(障害学生支援室等)に相談してください。
- 要望に対応するのが困難な場合に行う建設的対話と合意形成とは?
障害のある学生からの配慮の依頼は、基本的に、学部等から個々の教員に届くのが一般的です。先に説明した通り、この依頼は、担当教員への単なるお願いではなく、法制度上は、大学等に課せられれている義務/努力義務であり、障害のある学生に保障されている権利です。そのため、基本的には、要望に応じていただきたいわけですが、様々な理由で、対応が難しい場合もあると思います。大学等に対して、その旨を伝え、障害学生支援室等に作業をお願いしたけれども、ご自身で対応して欲しいと言われ、板挟みになってしまう場合もあると思います。その際、「出来る/出来ない」の二分法で考えず、自分で可能な方法を提案し、障害学生と合意を形成するという方法があります。例えば、先のパワーポイント等のスライドのデータをテキスト化して欲しいという要望の例で考えたいと思います。テキストファイルにすることが困難なので、すぐに「出来ない」と断るのではなく、「PDFファイルであれば、提供出来るけれども、どうだろうか?」という代替の提案をするという方法です。もしかしたら、学生から、「PDFでもいいんですが、アクセシブルなPDFでお願いします」というお願いが再度、あるかもしれません。それに対して、「希望するアクセシブルなPDFの作成方法がわからないので、教えてもらえれば、出来る限り対応しましょう」と回答をするというように、お互いが納得できるまで、対話を行うことを「建設的対話」と呼び、建設的対話の結果、打開策を見つけることを「合意形成」と呼びます。学生の要望に応えることが難しいと思った場合には、ぜひ、建設的対話を繰り返して、合意形成を行っていただきたいと思います。
視覚障害のある学生は、画面を読み上げるスクリーンリーダーや画面を拡大したり、配色を変更するソフト等の支援技術を使って、情報にアクセスしています。しかし、これらの支援技術だけでは、他の学生と平等になるわけではありません。学生からの特別な申し出がなくても、以下の点には留意していただくようお願いいたします。なお、グループワーク等を行う際には、他の学生にも指導をお願いします。ただし、自分に障害があることを開示したくない学生もいますので、プライバシーには留意をお願いします。
- スライド等の資料をアクセシブルにしてください!
- 授業で使用する資料等は、学生の要望に応じてアクセシブルなデータ形式にしてください。
- テキストファイルで提供する場合
- 一般的に、盲の場合にはテキストファイル、弱視の場合にはアクセシブルなPDFファイルを要望するケースが多いと思いますが、必ず学生に確認してください。
- テキストファイルを作成する際、図、表、フローチャート、写真、映像等の視覚情報は、内容が理解できるように、必ず文章で説明を入れてください。
- PDFファイルで提供する場合
- PDFで資料を提供する際、PDF のアクセシビリティのチェックをしてください。印刷した資料をスキャンするという方法では、いくらOCR機能を使ってもアクセシブルなPDFにはならないので、注意してください。
- 1ページに何枚のスライドを配置するか、カラーか白黒か等をサンプルを見比べてもらった上で、ご確認ください。
- オンデマンド型であったとしても、動画内で示すスライドは、拡大すると見えにくくなるため、必ず、別ファイルとして提供してください。
- Webで提供する場合
- 資料等は、必ず事前に、アクセシブルな配信方法で提供してください!
資料は必ず、事前に提供してください。なぜなら、盲の場合にも、弱視の場合にも、資料等にアクセスするために時間がかかるからです。また、資料等を提供する際には、学生の要望に従い、例えば、メール添付で送る等、アクセシビルな方法で提供してください。なぜなら、授業支援システム(LMS)は、必ずしもアクセシビルではないからです。
グループワーク等では、学生同士でプレゼンをしたり、資料等を交換してりすることもあると思います。そのため、学生同士で、配慮ができるように、指示をお願いします。視覚障害学生自身が障害を開示して、配慮を受けることを望んでいる場合には、例えば、「視覚に障害のある学生も受講しているので、お互いに配慮し合うように!」というような指示が効果的だと考えられます。しかし、視覚障害のある学生の中には、障害を開示したくないと思っている学生もいますので、ご注意ください。障害学生に無断で障害を暴露することは、プライバシーの侵害にあたりますし、無理に障害の開示を迫ることは、ハラスメントになる可能性がありますので、ご注意ください。
- 視覚に依存し過ぎた説明をしないようにしてください!
「ここに示したように・・・」「この図を見てください」「手順はこのフローチャートを見てください」等、図、表、フローチャート、写真、映像等の過度に視覚に依存した説明にならないようにしてください。例えば、「スライドの2枚目に箇条書きで示したように・・・」「3枚目のスライドにある需要と供給の関係を示した図を見てください」「5ページに示したフローチャートにある通り、合理的配慮は配慮の申請から始まり、合意が得られるまで、当事者からの提案と事業者の審査を繰り返すという手順で進められます」というように、図表を見なくてもわかるように、具体的に言語化してください。
- 読み書きや検索等に時間がかかることを理解してください!
資料等を事前に提供されても、スクリーンリーダーや画面拡大で、その内容にアクセス(読む)するためには、時間がかかります。特に、一度に把握できる範囲が狭いため、全体の中から、特定の内容や言葉等を探すためには、一度、すべての文章を読み上げる必要があるため、多くの時間が必要になります。また、タッチタイプができても、漢字等が間違っていないかどうかを音声や拡大で確認する必要があるため、書く作業にも時間がかかります。そのため、時間に対する配慮は必要不可欠です。特に、小テスト等、成績に関係する場合には、時間延長等の配慮をお願いします。
- 担当教員だけでは対応できないことは、障害学生支援室等に依頼してください!
資料等をアクセシブルにする作業には、時間がかかることがあります。特に、課題を遂行するために必要不可欠な文献等をテキスト化する作業をする場合、すべてを担当教員一人で対応しようとすると、負担が大きくなります。そのような場合には、障害学生支援室等に作業を依頼してください。法律では、合理的配慮の提供は事業者(大学)の責任で行うことになっていますので、決して、担当教員が一人で抱え込まないことが大切です。
- 障害のある学生は教員に対して依頼する際に躊躇することを理解してください!
一般的に、学生は教員に対して何かを依頼する際には、躊躇します。特に、障害のある学生は、自分のために教員に面倒をかけているのではないかと遠慮してしまうことが少なくありません。合理的配慮の提供は、障害を理由とする差別を解消するために必要なこととして、法律で定められているわけですが、やはり、教員に対して要望を伝えることを躊躇する学生は多いようです。学生は、勇気を振り絞って、要望を伝えに来ていることを理解し、丁寧な対応をお願いします。
本来、合理的配慮の提供は、大学全体として取り組むべきことなのですが、現状では、どうしても、障害のある学生を担当する教員に多くの負担がかかることが多いようです。そのため、知らず知らず、学生からの要望に対して、対応することが面倒だという態度を示してしまう場合もあるようです。学生は、教員からの返信に一喜一憂していることを、どうぞ、ご理解ください。
テキストファイルやアクセシビルなPDF等のオンライン教材を作成する方法を以下に示します。
- アクセシブルなスライド資料の作り方
- 授業支援システム(LMS)を利用する際の留意点
- アクセシブルなWEBページの作り方
- アクセシビリティのチェック方法(文責:青木)
大学のホームページ、ポータル、授業支援システムが障害のある学生にとってアクセス可能であるか否かは、総務省が配布している「みんなのアクセシビリティ評価ツール:miChecker」を用いて、簡単に確認することができます。ホームページやポータルの作り方、授業支援システムのカスタマイズの方法が大学ごとに異なるので、「どの授業支援システムならば問題ない」とお示しすることが難しい状況です。学生の学びを確保しようと努力して準備したオンライン授業が、障害のある学生に届かないと悲しいので、ぜひ一度、miCheckerで確認してみてください。チェックした結果、[概要レポート]に「悪い」「非常に悪い」という結果が出た場合、該当するポータルや授業支援システムとは別の連絡方法を考える必要があります。また、[詳細レポート]の内容を大学の教務や情報担当に伝え、改善を求めてください。大学側で管理できる要素である場合、比較的身近に時間で課題が修正される可能性があります。
それぞれの大学等によって利用するシステムは異なります。システム個々における対応については別にまとめるとして、ここでは一般的な点に絞って示します。
- 教員(話者)側のポイント(文責:伊藤)
多くの場合、教員の音声を資料等とともに配信することになろうかと思います。パソコンに内蔵されたマイクを利用することは可能です。しかしながらスタジオのような環境で利用することは稀であり、研究室や自宅であることが多いと思われます。つまり、生活騒音等がマイクから学生(聴衆)へ配信されていくことが想定されます。そのため、パソコンに内蔵されたマイクよりも可能であればピンマイクを装着し、パソコンのマイク端子に接続して利用することをお勧めいたします。もちろん、これは視覚障害者に対する配慮というよりも、通常のリアルタイム配信では必ず留意しなければならない事項だと思います。さらに、聴覚障害者への対応として、音声認識による機械翻訳の利用においても、可能な限り雑音を排除し、話者の音声のみを配信することが誤変換をなくす環境整備となります。また、対話型授業の場合、学生からの音声はできればイヤホンやヘッドホンを利用されるとハウリング(音が回る)防止にもなり、聞き取りやすくなります。
- 学生にトラブルがあったときの画面共有に関する情報源
リアルタイムのオンライン講義の最中に、視覚障害のある学生にトラブルがあった時、学生のPC等の画面を共有すると指示がしやすくなります。
成績評価に関係する試験やレポート等をオンラインで実施する際の留意点を以下に示します。
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新型コロナウイルス感染症の対策で外出を自粛するように指示されたり、緊急事態宣言の対象地域では、キャンパスが閉鎖されたりしており、対面での支援業務が出来なくなってしまった大学等もあるのではないかと思います。対面では比較簡単に実施できていた支援が、遠隔では苦労する場合が少なくありません。例えば、支援機器類が貸し出せなくなったり、対面で使い方等を説明することが出来なくなったり、スキャナや裁断機等が使えないために情報保障が困難になったり等が生じる可能性があります。また、他の地域から引っ越してきた新入生等からは、日常生活や社会生活を行う上の困難について相談される場面も増えるのではないかと思います。障害学生支援は、基本的に各大学等で実施するわけですが、今回は、非常時なので、各大学が協力して、障害のある学生の学びを支えていきたいと思います。特に、視覚障害のある学生に対するオンライン授業等の専門家がおられない大学等では、支援に苦慮したり、より質の高い合理的配慮を提供できなかったりする可能性があると思います。「視覚障害学生のオンライン授業を支援する会」のメンバーは、長年、視覚障害教育・福祉の実務に携わってきた専門家集団であり、ICTを活用した支援のノウハウはもちろん、日常生活や社会生活に関する支援や福祉施設や当事者団体等とのつながりもありますので、可能な限りの協力をさせていただきたいと思います。
視覚障害学生に遠隔授業を提供する際の配慮のポイントを以下にまとめました。
- 遠隔から支援を行う際
- 視覚障害のある学生の場合、スクリーンリーダーや画面拡大ソフト等を使って情報にアクセスします。そのため、ホームページや添付ファイル等のアクセシビリティには注意してください。
- 特に、新入生の場合、スクリーンリーダーや画面拡大ソフト等の使い方に慣れていない可能性があるため、電話等の学生が確実に使いこなすことができる連絡方法を確保してください。
- 授業開始前に、画面共有機能等も活用しながら、視覚障害学生とともに「事前の操作確認・練習」をしてください。
- 遠隔から支援をする際には、学生のPCの画面を共有することができるビデオ会議システムを利用すると便利です。スクリーンリーダーを使っている学生に支援をする際には、ウインドウズOS用スクリーンリーダーを使った画面共有と遠隔操作依頼の操作手順等の情報が有用です。なお、スクリーンリーダーでのアクセスが比較的容易なのは、Zoomミーティングだと言われています。
- 遠隔授業を行う際
- 学生が遠隔授業に確実に参加できるように事前に必ず確認してください。
- 視覚障害学生の受講に際しては、当該学生のICTスキルを踏まえ、(1)システムのアクセシビリティ、(2)授業コンテンツのアクセシビリティ、(3)授業形態や進行方法のアクセシビリティについてそれぞれ検討することが大切です。
- リアルタイムのオンライン授業を行うためのアプリ・ソフトには、Zoomミーティング、Cisco Webex Meeting、Google Meet(Hangouts Meet)等、各大学で推奨されているツールがあると思います。しかし、これらのツールは、視覚障害学生にとって操作しやすいとは限りません。特に、スクリーンリーダーでは、単独ではアクセスすることが困難な場合があります。選択が可能な場合には、視覚障害学生が使い慣れたツールを使っていただくようお願いします。また、ソフトおよびシステムを選択できない場合には、代替措置をご検討ください。
- 遠隔授業、特にリアルタイムの双方向授業では「画面が見えなくても参加できるように進行する」ことが必要です。画面共有機能で資料を共有したり、システム上のホワイトボード等を用いてグループワークをしたりする場合、中身が文字でもシステム上は「画像」としてのやり取りになり、スクリーンリーダーではアクセスできないので、考慮してください。演習形式の場合は、「発言の前には名乗る」、「カメラを使ったり画面共有をしたりする場合は、見えなくても分かるように必要な説明を口頭でも行う」といったルールを取り決めるといった配慮をしてください。
- Moodle、Universal passport、manaba等の授業支援システム(LMS)を利用する際にも、スクリーンリーダーや画面拡大ソフト等のアクセシビリティにご配慮ください。大学等の推奨システムが、アクセシブルではない場合には、メール添付等の代替措置をご検討ください。
- 教材として動画を作成する際には、画面を見なくてもわかるような説明をお願いします。また、スライド等の資料を作成する際には、文字サイズ、配色、フォント等に留意すると共に、図や写真等には必ず代替テキストをつけた上で、テキストファイル、代替テキスト付きのワードファイル、アクセシブルPDF等のアクセシブルなデータ形式にしてください。
- アクセシブルなデータは万能ではありません。障害の程度や科目の特性に応じて、点字や触図等が必要不可欠なものもあります。また、スクリーンリーダーも万能ではなく、数式や英語以外の言語等を正しく読み上げることはできません。このように障害の程度や科目の特性に応じて、データ提供だけでなく、必要な代替措置も検討してください。
- 学生が授業に参加できない状況に陥った際に知らせることができるよう、学生から教員への連絡方法を確保してください。
- リアクションペーパーやテスト等で成績評価を行う際
- レポート提出やテスト等へのアクセスができない状況に遭遇する可能性があるため、学生が教員へ連絡する方法を確保してください。
- 授業支援システムの中には、視覚障害学生にはアクセスできなかったり、アクセスしにくいために、時間がかかったりするものもあります。そのため、メール等でやり取りができるような代替措置や時間延長等の配慮をご検討ください。
- 障害の程度や科目の特性に応じた情報保障が十分にできなかった場合、リアクションペーパーやテスト等において、代替措置や評定方法の変更が必要になります。
視覚障害のある学生を支援する際に知っておくべき秘訣を紹介します。
- 視覚障害とは?
視覚障害と言っても、みんな同じわけではありません。例えば、視覚活用が困難な「盲」と、ある程度、視覚活用が可能な「ロービジョン(弱視)」では、支援方法が異なります。「盲」の場合には、スクリーンリーダーが効果的ですが、「ロービジョン(弱視)」の人の中には、画面拡大や白黒反転等を好む場合があります。また、同じ「ロービジョン(弱視)」でも、視力や視野の程度によって、画面拡大を好む場合もあれば、スクリーンリーダーと画面拡大等を併用することを好む場合もあります。さらに、視覚経験を獲得する前に失明し、早期から触察や視覚活用のトレーニングを行ってきた「先天(早期)」と、視覚経験を獲得した後に失明したために、視覚表象は有しているが、触察や視覚活用のトレーニングは十分とは言えない「中途」でも、支援方法が異なることがあります。例えば、同じ「盲」でも、「中途」の場合には、点字よりも音声を好む場合があります。このように、視覚障害とひとくくりに考えないで、それぞれのニーズに基づいて支援を行う必要があります。
- 社会モデルの観点から見た視覚障害
視覚障害に限らず、障害のある学生を支援する際、「障害」とは何かを理解しておくことが必要です。見えない・見えにくいことが「障害」なのではなく、見えない・見えにくいこと人達のことを配慮せずに社会が構築されていることが「障害」であることを的確に理解しておく必要があります。前者を障害の個人(医学)モデル、後者を障害の社会モデルと呼びます。障害のある学生を支援する際には、障害の社会モデルの考え方を適切に理解している必要があります。以下、障害の社会モデルに関する情報源をいくつか紹介します。この情報は、ファカルティ・ディベロップメント(FD)講座等でも活用していただけると良いと思います。
- 授業支援システムを利用する際の注意(文責:青木)
- 授業支援システムについて
学習管理システム、Learning Management System (LMS)、とも呼ばれています。授業をオンラインで実施するために、このサービスを利用する教員が増えることが予想されます。また、授業の実施方法に関する連絡も、授業支援システムを介してアナウンスされる可能性があります。
- 授業支援システムのアクセシビリティについて
各大学で採用されている授業支援システムに加え、ポータルのアクセシビリティに課題がある場合があります。各大学のポータル、授業支援システムのアクセシビリティをチェックしておいてください。アクセシビリティに課題がある場合は、早急に修正依頼をする必要があります。ポータルと授業支援システムとは管理している部署が異なる場合が想定されます。アクセシビリティをチェックする際、URLの変遷を注意してみておいてください。
・ログイン画面は大学ポータルで、ログイン後にLMSに移る形式
・大学ポータルにログイン後、再びLMSにログインする形式
等があるようです。
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新型コロナウイルス感染症への対策として、大学等の社会的責任と使命を果たすためにキャンパスを閉鎖しつつも、教育活動の継続を図るためにオンライン(遠隔)で授業等を実施する大学等が増えています。新入生ガイダンスを含め、ほとんどすべての講義や説明会等をオンラインで実施するために、ご苦労されていることと思います。オンライン授業は、教育活動の継続を図るために必要不可欠であり、障害のある学生や留学生を含め、すべての学生が利用できるシステムづくりも必要不可欠です。共生社会を実現することも大学等が果たすべき社会的責任の一つだと思います。オンライン授業を展開する際に、ぜひ、障害のある学生、特に、動画や図表等のアクセスが困難な視覚障害のある学生のことも最初から考えたオンライン授業を構築していただくようお願いいたします。
教職員や障害学生支援室等と共に、以下のような物理的環境・人的支援環境等を整えていただくようお願いいたします。
- 基礎的な環境整備
- 大学等のホームページ、ポータル、授業支援システムのJIS規格への準拠のお願い(文責:中野・青木)
オンライン授業をはじめ、学生への様々な情報提供は、ホームページ、ポータル、授業支援システム等に掲載されることになると思います。ところが、ホームページのアクセシビリティは、必ずしも十分とは言えない場合があります。特に、スクリーンリーダーというアプリを使って、画面を読み上げさせながら利用している視覚障害のある学生にとって、ウェブアクセシビリティは生命線です。もしも、大学等のホームページ、ポータル、授業支援システムがウェブアクセシビリティを定めたJIS規格(JIS X 8341-3:2016)に準拠していない場合には、対応をお願いいたします。なお、ホームページ、ポータル、授業支援システムをJIS規格準拠に変更するためには、時間がかかりますので、まずは、情報を必要としている視覚障害学生にアクセシブルなデータ形式で、個別に情報提供が出来る仕組み作りをお願いいたします。
- 合理的配慮
- 組織(事業者)としての合理的配慮の提供体制確立のお願い
合理的配慮の提供は事業者である大学等に課せられた義務/努力義務です。個々の教員が対応出来ない場合には、大学等が障害学生支援室等の学内組織を総動員して、事業者として義務/努力義務を果たすことが、コンプライアンスの観点から求められることにご留意ください。なお、「障害者差別解消法」では、国の行政機関・地方公共団体・独立行政法人・特殊法人等には法的義務が、民間事業者の場合には努力義務が課せられています。また、東京都のように、条例(東京都障害者差別解消条例)で民間事業者に合理的配慮を義務づけている自治体もあります。つまり、合理的配慮の提供は、国公立大学では義務、私立大学では努力義務とされているが、東京都のように民間事業者にも条例で義務化している自治体では、すべての大学が義務になっています。なお、入学拒否等の障害を理由とする不当な差別的取扱いは、すべての大学において禁止されています。
- 視覚障害のある学生との連絡・調整のお願い
視覚障害のある学生、特に、新入生の中には、大学等から郵送される書類、ホームページや授業支援システム等での告知等に気づかない場合があります。入試等で配慮を希望した学生には、障害学生支援室のスタッフ等から積極的に連絡をとっていただき、配慮の調整等が出来るようにしてください。
- その他
- 障害学生支援スタッフのテレワーク環境整備のお願い
キャンパスが閉鎖された場合、支援スタッフがテレワークで障害のある学生の支援を行う必要があります。視覚障害のある学生にオンライン授業等が出来るように遠隔から電話やWeb会議システム等で使って支援するためには、テレワークの環境整備が必要不可欠です。支援スタッフが、自宅で利用できるノートPCや通信環境等の整備をお願いいたします。なお、遠隔での支援では、説明等に時間がかかるため、勤務時間についての配慮が必要になる場合があります。
以下、オンライン授業のアクセシビリティに関する各大学等の先進的な取り組みを紹介いたします。
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- 中野 泰志(慶應義塾大学) *代表
- 永井 伸幸(宮城教育大学)
- 柏倉 秀克(桜花学園大学)
- 氏間 和仁(広島大学)
- 田中 良広(帝京平成大学)
- 南谷 和範(大学入試センター)
- 相羽 大輔(愛知教育大学)
- 矢野口 仁(松本大学)
- 伊藤 英一(元長野大学)
- 御園 政光(慶應義塾大学)
- 青木 千帆子(早稲田大学)
- 安田 真之(NPO法人ゆに)
- 小林 秀之(筑波大学)
- 柳沼 佑介(神奈川県立中原養護学校)
- 田中 武(広島大学)
- 関根 千佳(同志社大学、株式会社ユーディット)
現在、大学が閉鎖されているため、メールでご連絡くださるようお願いいたします。
本会の趣旨に賛同し、一緒に活動を展開してくださるボランティア・スタッフを募集しています。ご協力いただける方は、具体的な内容をお書きの上、メールでお問い合わせください。
このホームページへのリンク設定は、ご自由にどうぞ。
もし、よろしければ、来訪者アンケートにご協力ください。アンケートは、「WEBフォーム」と「メール」送信方式の2種類があります(スクリーンリーダーのユーザは、WEB方式よりも、メール方式の方がアクセシブルだと思います)。なお、質問項目は、以下の5つです。
アンケートでご回答いただく質問項目
宛先(視覚障害学生のオンライン授業を支援する会宛):aol4svi-group@keio.jp ← メールアドレスをクリックすると自動的にメールソフトが起動し、質問項目が表示されます。
タイトル:「視覚障害学生のオンライン授業を支援する会」来訪者アンケート
- 1.あなたの立場を教えてください。(以下の8つの選択肢の中から該当する項目のみを残してください)
- 障害学生支援に携わっている大学教員
- 視覚障害のある学生が自分の講義を受講する大学教員
- 障害学生支援に携わっている大学職員
- 視覚障害のある大学生
- 視覚障害のある大学生の母校の方
- 視覚障害のある大学生の保護者
- 盲学校教員等の視覚障害教育関係者
- その他(差し支えなければ、ご記入ください):
- 2.どういう情報を求めてアクセスされましたか?
自由記述:
- 3.求めていた情報は得られましたか?(以下の4つの選択肢の中から該当する項目のみを残してください)
- 十分に得られた
- おおむね得られた
- 部分的にしか得られず、もっと情報が必要である
- 得られなかった
- 4.現在、提供されている内容以外に、どのような情報があると良いと思われますか?
自由記述:
- 5.その他、ご意見・ご要望等ありましたら、ご記入ください。
自由記述:
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