入試等の各種試験ではペーパーテストが実施されることが多いが、視覚障害者は、通常の試験問題にアクセスすることが困難である。そのため、問題の点訳・拡大、代替解答方式、試験時間の延長等の配慮が必須である。しかし、事実上の標準である大学入試センター試験でさえ、提供すべき配慮を決定するための科学的根拠や決定過程が明確ではなく、実務上の制約のため必要な配慮が十分に提供されていない等の問題がある。また、試験の実施主体によって提供される配慮が異なるが、その実態も明確ではない。視覚障害者が公平に試験を受けるために必要な配慮が、全ての試験で実現できるようにするためには、試験の本質を変えずに、個々の障害状況に応じた科学的根拠に基づく適切な配慮を、実施者に過重ではない方法で実現する必要がある。そこで、本研究では、各種試験で実施されている視覚障害者に対する配慮実態を詳細に調査した上で、配慮を決定するための行動評価を用いた新しいアセスメント方法の開発、実務上の制約と視覚障害者のニーズのコンフリクトを解決するPC等を用いた試験システムの開発、障害の社会モデルに基づいた配慮ガイドラインの試作を行う。