スクリーンリーダーユーザのGoogle Classroom体験記
Google Classroomを利用した体験談を、スクリーンリーダー使用者の観点からまとめました。なお、今回の検証では、スクリーンリーダーには日本では利用者が一番多いとされるPC-Talkerを、WebブラウザにはInternet Explorer(IE)を使いました。JAWSやNVDAに比べて、PC-TalkerとGoogleのウェブサービスの愛称があまりよくないので、「相性がよくない組み合わせ」で試したとお考えください。
今回のトライアルでは、Google ハングアウト(Hangout)という画面共有も可能なビデオ会議システムを使い、1人の先生が、3人の学生に対して授業を展開するというシチュエーションでした。体験記の報告者である私は、その中の一人という設定でした。先生は、Google Classroomの中に用意した様々な教材を、ハングアウトで指示しながら、授業を進めるというスタイルで講義を展開しました。授業はリアルタイム、双方向型で、先生が授業をしている最中に学生が発言することもできるというゼミ形式の講義でした。
授業の最中に、スクリーンリーダーユーザである私が戸惑っていると、先生が私のPCの画面を共有し、操作方法を指示しながら、説明を続けてくださいました。このような形式で、授業を受けて気づいたことを以下に記します。
- 1.利用可能性
受講上必要と思われる操作は、概ねキーボードとPC-Talkerの読み上げを頼りにアクセスすることが可能でした。
- 2.操作をする際の問題点
PC-Talkerでアクセスできるとは言っても、一部読み上げが不完全な個所や、キーボードで操作しにくいものがありました。以下、今回、利用してみてわかった点を列挙します。
- 教材をダウンロードするのに必要なメニュー操作で、カーソルキーで操作はできますが、項目を正しく読み上げないものがあります。したがって、教材ファイルのダウンロードが困難でした。
- 課題やテストがGoogle Formsで作成されている場合、設問文章を「○○の エディット」と、あたかもそれがエディットボックスであるかのように読み上げたり、ラジオボタンで洗濯したものにチェックを入れても「チェック」と読まなかったりといった問題がありました。Google Formsの場合、スクリーンリーダーとキーボードで回答を入力して送信する操作は可能ですが、正しく入力できているかどうかの確認がしにくく、パソコンが得意ではない学生にはハードルが高い気がします。
*Google Formsを使わず、Classroom内で回答を文字入力させたり、ファイル添付で提出させたりする形式の課題は、比較的操作しやすい印象でした。
- Classroom内で任意のボタンやリンクを探したいときに、PC-Talkerの仮想カーソルでたどり着けずに、タブキーでたどったらフォーカスが当たる、あるいはその逆のことがあります。具体的にどういう状況でどうなるかを細かく整理するところまでは、今回はできませんでした。この点は、パソコンに慣れている学生は大丈夫だと思いますが、不慣れな学生はけっこう困ると思いました。
- 3.操作にかかる時間の問題点と対応策
- 初めてClassroomを使ったため、不慣れなこともありますが、上述のように操作性に問題があるため、かなり時間を要しました。
- 授業をライブ配信しながらリアルタイムでClassroomの操作をさせるというのは、スクリーンリーダーユーザーにとってはけっこう大変だと思いました。
- Classroom上で「添付ファイル」で配布する教材類は別便でメール送付するとか、課題やテストも必要に応じてメール提出に切り替えるといった対応が必要になると思いました。
- 4.事前の構造説明や操作練習の必要性
操作の習得やClassroomのメニュー構造の把握等を考えると、授業開始前に、一度視覚障害学生と教職員等で操作練習ができるかどうかが、かなり重要だと思いました。私自身、パソコン操作が苦手だとは思っていませんが、どのメニューに何があるかがわからずに、そこを把握するのにかなり時間がかかりました。今回のトライアルでは、先生と画面を共有し、遠隔でサポートしていただいたので、やっとなんとなく理解できたという印象です。
- 5.ビデオ会議システムハングアウトの使い勝手について
- ハングアウトのセットアップや接続ですが、Google Chromeであれば、送られてきたリンクを開くだけですぐ繋がるので、スクリーンリーダーユーザーにも簡単に操作できると思いました。
- IEの場合はプラグインのインストールが必要ですが、インストールの操作は難しくはありませんでした。
- 今回、私はほぼ初めてハングアウトを使いましたが、先生から送られてきた接続用のリンクをIEで開いたら、自動的にプラグインのダウンロードとインストール画面に飛び、指示に従ってキーボードで操作してインストールすることができました。たぶん、タブキーとエンターキーだけの操作でできたと思います。
- しかし、ハングアウトにも問題がありました。先生が他の学生と話しを始めると、動作がとても遅くなり、こちらの声も届かなくなり、接続し直さなければなりませんでした。なお、この不具合は、先生が他の学生と話しを始めたことが原因かどうかは不明です。
- 遠隔でパソコン操作の練習をする場合は、私が知る範囲では、今のところハングアウトよりも、Zoomがいいような気がしています。理由は、操作が簡単なことと、スクリーンリーダーの音声を支援者に共有するのが楽なためです。なお、Zoomも、1対1の通話であれば無料で使うことが可能です。
文責:安田
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