「慶應−川崎エイジング・スタディ」研究代表
慶應義塾大学教授 高山 緑
新春の候、皆様におかれましては、良い年をお迎えのこととお慶び申し上げます。
本日は、慶應−川崎エイジング・スタディ(The Keio-Kawasaki Aging Study)のニュースレター「K2スタディだより」第7号をお届けいたします。第7号では、昨秋、お葉書でお寄せいただいた皆様のお声をご紹介させていただきます。新型コロナウイルス感染予防のため、新しい生活様式が求められる中で皆様が今、何をお感じになり、どうお暮らしになっているか、生活の工夫や知恵、新しい日常に対する思いなど、お寄せいただいたお声をご紹介いたします。私たち研究メンバーの日頃の様子も交えながらお届けいたします。お葉書をお送り頂いた皆様に御礼申し上げます。
末筆になりますが、皆様と、皆様の大切な方々のご健康とご多幸を心より祈念しております。
目次
毎日の生活リズムをなるべく続ける
新型コロナウイルス感染症の影響により、自分や家族が感染するかもしれない、 他人を感染させるかもしれないと不安を抱いたり、継続していた活動に制限がかかることで気分が落ち込みやすくなったりします。お寄せいただいたお便りには、「自粛生活で戸惑うことも多い」「新型コロナウイルスに不安を感じる」「人との交流がなくなり体調を崩した」という方もいらっしゃいました。
一方で、感染症への特別な工夫をするというよりも、「普段の暮らしのリズムを続けている」というお声が大変多く届きました。食事、運動、睡眠など、健康的な生活を意識されながら、起床から就寝までの過ごし方を習慣化されていらっしゃいました。生活リズムの内容は、皆様の状況に応じて工夫がなされ、食事の選び方、身体や脳の動かし方、ご自身の楽しみを盛り込むなど多岐にわたっていました。
普段の生活をできる限り継続することは、過度に不安を抱いたり、情報に惑わされることが少なくなったりすると考えられます。不便を感じやすい時だからこそ、日常生活でやるべきことをやることは、生活の乱れを防ぎ、身体的な活動の維持にも繋がっているのではないでしょうか。
また、自ら考えた生活リズムを実行することで、普段の生活の中で目標意識を持って過ごすことができます。大きな目標だけでなく、日常的な行動の中で無理なくできることを継続して行うことで、無力感を感じにくく、関心や意欲の低下を防ぐと考えられます。
(石岡)
普段の生活の中で体を動かしています
外出する機会が減り、家で過ごす時間が長くなると、活動量自体が減ってしまいがちです。活動量の低下は筋力低下や免疫力低下をもたらす可能性もあるため、「活動量を減らさないよう意識して体を動かしている」という方もいらっしゃいました。ここでは、お送りいただいたお便りから、生活の中でどのような方法や内容で体を動かしていらっしゃるかその実践の一部をご紹介します。
前回お送りした「K2スタディだより」第6号に同封した資料に掲載されていましたが、65歳以上の方の身体活動の目安として、身体活動の強さを問わず毎日40分の身体活動を行うことが推奨されています。この身体活動には、ストレッチ、ラジオ体操、ウォーキングなどの体操や軽い運動だけでなく、買い物や食事づくり、掃除、電話、手芸など、さまざまな生活の行動も含まれています。
(石岡)
閉じこもらないよう工夫しています
ご自身が感染しないために、あるいは、人に感染させないために、人との物理的な距離に留意しながら、閉じこもらないように工夫されているご様子を紹介します。
- (1)意識的に外に出るよう心がけ、日々の買い物や散歩にひと工夫。
- (2)家族や友人との交流を続けるための、工夫や心がけ。
寒い季節になると、例年でもついつい閉じこもりがちになりますね。外出や交流が減ると、日々の生活リズムが崩れたり、食欲が低下して栄養も偏ってしまうなど、身体の健康にも影響があると言われています。「3密」を避けつつ、閉じこもりも防ぐ工夫は、この冬を元気に乗り越える上で、たいへん参考になりそうです。
(菅原)
心が華やぐことを見つけるようにしています
感染を広げない、罹らないために、今しばらく、外出や外での活動を控えないといけません。でも、「制約」だけでは、私たちの日常は味気のないものになってしまいます。気持ちが沈まないように、明るく前向きな気持ちを持つように意識したり、安全に配慮しながらも、心が和んだり、華やいだり、心を解き放す時間を大切に、思慮深く生活されている日常の様子を綴ってくださったお便りもたくさん頂戴しました。
(高山)
- (1)明るく、前向きな気持ちを持つよう心がけています。
- (2)心が華やいだり、心を解き放す時間を大切にしています。
昨秋お寄せいただいたお便りのご紹介
皆様から頂くお声は私たちの励みになっています。
ここでは、昨秋お寄せいただいたお声を一部紹介させていただきます。
ゆる散歩、始めました
歌って気合を入れてます
1日でも平穏な生活を
K2スタディメンバーのコラム
「感染拡大予防のため、キャンパスを閉鎖します。授業は全てオンラインとします」-昨年4月初め、そのお知らせは突然きました。キャンパスは立ち入り禁止となり、大学での研究も授業も春はストップしました。私たちは大量の講義資料を自宅へ持ち帰り、自宅でオンライン授業用の講義動画を制作するという初めての体験をしました。
大学での学びの醍醐味は、学生と教員のディスカッションの中にあると思います。その点では一日でも早く以前のようなキャンパスでの学びの再開を期待して止みません。その一方で、今回の体験は、大学教育の意義や役割をあらためて考えたり、講義内容を見直したり、オンラインツールなどの新しい知識を学ぶ良い機会にもなりました。
(慶應義塾大学・高山 緑)
皆様からのお便りにもありましたが、私も春先の「外出自粛」を経て、このままでは運動不足で足腰が弱ってしまう!と一念発起し、近所の川沿いの散歩を始めました。土日のみですが、平日の運動不足を補うために、1万5千歩を目標にして歩いています。
いつの間にか、今週は木の葉はどんな色になったかな、鳥の巣はどうなったかな、と道沿いの変化を楽しみに歩くようになりました。都会の小さな川なのに、四季の移り変わりのなんと豊かなことか!アルバムには旅行の写真は1枚もありませんが、その代わりに、空、木の葉、道端の花、昆虫・は虫類を捕まえて笑顔の子どもたち、の色鮮やかな写真でいっぱいです。
(東京大学・菅原育子)
皆様、K2スタディだよりを読んで頂き有難うございました。
昨年を振り返ると、通勤回数が大幅に減り、授業を自宅でしたり、お昼ご飯が無い!と慌てて買い物に行ったり、深夜3時に米国の会議に出るなど、これまで当たり前だったことが大きく変化した年でした。夏に、名古屋に住む友達の結婚祝いをオンラインで開催したのも一つの思い出です。
(慶應義塾大学・石岡良子)
慶應−川崎エイジング・スタディ
(The Keio-Kawasaki Aging Study:K2スタディ)
本研究は、すべての人が健やかに安心して暮らせる地域社会を創出することを目指して、2015年に開始しました。首都圏にお住まいの中高年の方々の生活や考えについてより詳しく教えていただくため、神奈川県川崎市中原区、東京都渋谷区に在住の70歳以上の方を対象に、「長寿社会の健康と暮らしに関する調査」を行っています。
この調査では、お住まいの地域の環境、身近な方々との交流や社会参加、地域社会に関する考え方、医療・福祉サービスの活用を中心にご意見をうかがい、それらの生活実態が、人々の生活満足感や心身の健康状態にどのような影響を及ぼしているかを明らかにすることを目指しています。
この調査をもとに、中高年の方々の日々の生活を支えるまちづくりやサービスのあり方を、区や市、県、国にむけて具体的に提案しています。