The Keio-Kawasaki Aging Study

K2スタディ vol.1

平成27年10月吉日
慶應義塾大学
調査責任者 教授 高山緑

K2(ケイ・スクエア)スタディとは、川崎市中原区にお住いの方にご協力いただきました「慶應—川崎エイジング・スタディ(Keio-Kawasaki Aging Study)」の略称です。1回目の調査は、今年2月、3月に実施させていただきました。日本を含めた先進国では、人口の高齢化が急速に進んでいます。今や日本では、75歳以上の人口は1500万人(平成24年時点)に達しています。しかし、70歳代に加えて80歳代の方も対象とした調査は世界的にも少なく、心身の健康状態、家族や友人との関係や社会活動のあり方などについてはまだよくわかっていません。K2スタディでは、70代から80代にわたってどのような生活の変化があるのか、そして、そのような変化がどのように心身の健康に影響するのかについて明らかにすることを目的に調査を開始しました。

このK2スタディだよりでは、本調査の結果だけでなく、国内外で話題となっている超高齢社会に関する情報などを含めてご紹介させていただいたり、私たち研究メンバーが行っている活動などについて、ご報告させていただきたいと考えております。不定期ではございますが、今後、発行して参りますので、どうぞよろしくお願いいたします。

さて、今回の調査では873名もの多くの方からご協力をいただくことができました。次のページでは、調査で明らかとなった結果の中から、皆さんの健康や美容に対する意識、日ごろ行っている健康行動についてご紹介させていただきます。そして、最後のページに、K2スタディの共同研究者によるコラム欄を設けました。今回は美容に関連して、ニューヨークに住む人生を楽しむ達人たちの写真集をご紹介します。

調査結果1 高い健康への関心と美容への意識

今回の調査では、皆様の健康と美容に関する意識についてお伺いしました。調査の結果、多くの皆様が健康に留意し、さらには若々しくいることや美容に対しても、高い意識をお持ちであることがわかりました。

「健康でいられるよう、できるだけの努力はしたい」と思われますかという質問に対して、8割近い方が「そう思う」と回答されました。「ややそう思う」と合わせると、9割以上の方が「できるだけの努力はしたい」と回答されました(図1)。

そして「若々しくいることや美容について関心がある」と思われますかと伺った質問では、3人に1人が「そう思う」と回答され、「ややそう思う」と合わせると6割の方が「若々しくいることや美容について関心がある」と回答されました(図2)。

図1 健康でいられるよう、できるだけの努力はしたい,図2 若々しくいることや美容について関心がある

また「健康のため、食事に気をつけている」か、どうかについては、8割以上の人が「食事に気をつけている」と回答され、「健康のため、体を動かすように気をつけている」、「ぼけないように、頭を使うことを心がけているか」との質問に対しては、各々9割近い方が「気をつけている」「こころがけている」と回答されました。

さらには「病気の予防のためなら負担が大きくてもお金や時間をかけてもよい」「認知症予防のためなら負担が大きくてもお金や時間をかけてもよい」かどうかという質問に対して、それぞれ約7割の方が「そう思う」と回答されました。

今、神奈川県や川崎市では「健康長寿(元気で長生きする)」のためのさまざまな施策が進められていますが、おひとりひとりが日々、健康や美容に対する高い意識をもたれていることがわかりました。

調査結果2 健康行動も積極的に

調査では、日常生活で行っている5つの健康行動についても伺いました。

「体操・ストレッチ・ヨガ」「散歩・ウォーキング」「スポーツ・運動(水泳、ジョギング、ゴルフなど)」といった体を動かす活動、および「血圧測定」「体重測定」をどのくらいの頻度で行っているか伺いしました。

体を動かす活動で、最も多くの人が頻繁にされていたのは「散歩・ウォーキング」でした。3人にひとりが「ほぼ毎日」散歩やウォーキングをされていました。また、週1回以上されている方を「定期的にしている」とみなすと、約6割の方が定期的に散歩やウォーキングをされていました(図3の1)。

「体操・ストレッチ・ヨガ」も3人にひとりの方が週1回以上、定期的にされていました(図3の2)。一方、比較的運動量の多い「スポーツ・運動」を日頃されている方はやや少なくなりますが、それでも5人にひとりの方が週1回以上、定期的に実施されていました(図3の3)。

図3 日常生活で行っている健康行動の頻度

一方、健康を維持するためには、日常的に血圧や体重を管理することもたいへん重要なことです。血圧測定に関しては、3割の方が「ほぼ毎日されている」と回答されました。週1回以上されている方は全体の4割でした。体重測定に関しては、2割の方が「ほぼ毎日」されていました。また4割以上の方が週1回以上、定期的に体重測定をされていることがわかりました。

多くの方がなさっている「散歩・ウォーキング」は、体の健康だけでなく、認知機能(頭の働き具合)にとっても、良い効果があることが最近の研究から明らかになっています。また、短い時間であっても効果があることを示す研究もあります。最近、体を動かしていないなと思われる方、ぜひ無理のない範囲で秋空の下、散歩を楽しんでみられてはいかがでしょうか。

コラム 自分なりの生活スタイルで心いきいき

ここでは、K2スタディの共同研究者によるコラムを掲載いたします。調査の結果だけではなく、超高齢社会に関する興味深い活動や書籍、私共の学会活動や執筆活動など、幅広い情報をお伝えできればと思っています。

第1回目は、写真集『Advanced Style』(アドバンスト・スタイル)をご紹介します。

『Advanced Style』(アドバンスト・スタイル)表紙
タイトル:『Advanced Style』(アドバンスドスタイル)
著者:アリ・セス・コーエン(著)・ 岡野ひろか(翻訳)
出版社:大和書房
発売日:2013年2月23日発売

本作品は、ドキュメンタリー映画『アドバンスト・スタイル そのファッションが、人生』に登場する60歳以上の女性たちの写真集です。彼女たちは、オリジナルの洋服やアクセサリーを着こなし、ニューヨークで暮らしているそうです。カラフルで個性的な装いをするのは、勇気がいりそうですが、あか抜けた彼女たちの表情を眺めるだけでも楽しめそうです。

K2スタディの結果からも、「若々しくいることや美容」について関心がある方は約6割いらっしゃいました。多くの方が「美しくありたい」と感じていらっしゃるようです。華やかなファッションがお好きな方、シックなファッションがお好きな方、好みはそれぞれです。自分なりのおしゃれは、男性女性、年齢にかかわらず楽しむことができ、生活の張り合いになるかもしれませんね。

(文責:石岡良子)