教科書・読書バリアフリーを推進するICT教材
PDF版拡大図書とUDブラウザ
中野泰志(慶應義塾大学)
本教材は、教科書・教材はもちろん、様々な図書のバリアフリーを推進し、視覚障害等があるすべての幼児児童生徒の主体的な学びを目指して開発されました。
学校での学習だけでなく、家庭学習や日常生活の読書にも活用できますし、入学試験等にも活用されています。なお、PDF版拡大図書やUDブラウザは無償で提供しています。iOSで動作するタブレット端末やスマートフォンに対応しています。
デジタル版拡大教科書
PDF版拡大図書
PDF版拡大図書は、 教科用拡大図書(拡大教科書)と同様に使用し得るための諸条件等を明らかにするための調査研究の一貫として開発されたデジタル版拡大教科書です。紙で発行されている教科書とまったく同じレイアウトを保持しつつ、可搬性・視認性・操作性等を追求したデジタル教科書です。2013〜2024年までに5,216人の児童生徒が、延べ77,489冊のPDF版拡大図書を利用しました。
【紙媒体の拡大教科書の課題】
- 教科書が厚く、重く、大きいため、持ち運びが難しい!
- 本文の文字は読みやすくても、一部の図表等が見にくい場合がある!
- 原本教科書とページが対応していないので、指定されたページを探すのに時間がかかる!
- 必要な教科書がすべて提供されていないし、新規作成を依頼すると時間がかかる!
【PDF版拡大図書の特徴】
- 持ち運びやすさ(可搬性)を追求
- タブレット1枚にすべての教科書が入るので、持ち運びがしやすい
- iOSが動作する機器であれば、iPadだけでなく、iPhoneやiPod touchでも動作可能
- 見やすさ(視認性)を追求
- 文字や図等の拡大機能(幅広い視力に対応できるように、必要に応じて拡大率を自由に変更可能)
- 配色変更機能(まぶしさを軽減するために、背景色を変更したり、白黒反転等の配色の変更が可能)
- リフロー表示機能(文章が主体の内容を読みやすくするために、文字サイズを変更しても上下のスクロールだけで文章にアクセス可能)
- 音声読み上げ表示機能(眼の疲労を軽減するために、読み上げている場所をハイライトしながら、音声で文章読み上げさせることが可能)
- ルビ表示機能(漢字の読み方を学んだり、正確に読み上げさせたりするために、自分でルビをつけたり、ルビの表示をオン・オフすることが可能)
- 文書スタイル変更機能(文章を読みやすくするために、フォント、行間隔、文字間隔、縦書き・横書き等を変更することが可能)
- 使いやすさ(操作性)を追求
- ページジャンプ機能(指定されたページを迅速に開くことができるようにするために、入力したページにジャンプすることが可能)
- 書き込み機能(重要な場所に色づけしたり、メモを書くことができるようにするために、手書き入力、キーボード入力等の書き込みが可能
- キーボード等操作機能(入力や操作を簡単にするために、外付けキーボードやスイッチから操作することが可能)
- ブックマーク機能(重要なページに付箋を付けたり、書き込んだページを探しやすくするために、ページを記憶することが可能)
- 意味調べ・コピー機能(わからない言葉を調べたり、本文を引用したりするために、指定した言葉の意味調べやコピーが可能)
- 転送機能(自分が書いたメモや自作教材等をやり取りするために、メモやファイルを転送することが可能)
- 検索機能(教科書の全文を検索することが可能)
- セキュリティを追求
- 試験機能(試験にも利用できるようにするために、利用制限をかけることが可能)
- 不正利用防止機能(もしも、iPadを紛失しても教科書データが盗まれないようにするために、教科書データの不正利用を防止することが可能)
- 迅速な教科書提供を追求
- 教科書目録掲載の小中高等学校のすべての検定教科書を迅速に提供
教科書・教材閲覧アプリ
UDブラウザ
UDブラウザは、ユニバーサルデザインの理念を基盤とし、読書のアクセシビリティをユーザ参加によって、徹底的に追求して開発された電子書籍閲覧アプリです。固定レイアウト(PDF)とリフローレイアウト(HTML)の切り替えが可能です。国立国会図書館の「みなサーチ」で公開されているプレーンテキスト、WORD、透明テキスト付PDF、 EPUB3、音声DAISY、マルチメディアDAISY等の幅広いフォーマットに対応しています。
UDブラウザの主な機能
- ハイブリッド表示機能
- 原本の教科書や教材と全く同じレイアウトで表示させるモードと、本文だけをわかりやすい文字サイズや書体(UD教科書体等、見やすいUD書体を内蔵)で表示させるモードの2つの表示方法を、用途に応じて、瞬時に切り替えて利用できます。
- 拡大・読み上げ機能
- 文字等を自由に拡大したり、読み上げることが可能です。
- ページジャンプ機能
- 「教科書の○○ページを開いて!」という指示に瞬時に対応可能です。
- しおり機能
- しおりを挟んだり、しおりのあるページを一覧表示できます。
- 辞書検索機能
- 文字や単語等を触るだけで、意味等を調べることが可能です。
- 書き込み・ラインマーカー機能
- フリーハンドで書き込みを行ったり、ラインマーカーを引いたりすることが可能です。
- 自作教材等の登録機能
- PDFやHTMLはもちろん、ワード等のアプリで作成した自作教材を取り込んで利用することが可能です。Dropbox等にも対応しています。
利用者の声
- 【児童生徒の声】
- PDF版拡大図書はわかりやすいので、教科書の問題を解くペースが早くなりました。 <小4>
- 紙の拡大教科書では、交流学級での授業では、「下の図」が下にはなく、次のページにあることが多く困っていた。PDF版拡大図書は、社会の資料集や家庭科など、ページが行き来するものはページ検索で戸惑うことなく時間を短縮できた。 <小6>
- 拡大教科書は試験範囲を探して学習するときに冊数が多くて不便だったけれど、PDF版拡大図書を使い始めてからは教科書の一覧から試験範囲をすぐ見つけられるようになったことで学習しやすくなり、成績が向上したと感じられる。 <中1>
- ほとんどの授業の教科書がみれて教室移動や家での勉強の時に荷物を少なくできる。 <中2>
- 持ち運びが楽なため、自宅でも復習がし易い。紙の教科書で時間をかけて探していた事がデジタルを使いこなせるようになり、効率よく探せるようになった。勉強し易くなった。 <中3>
- 紙で白地に印刷された教科書を見ていると頭痛がしてくるので長く勉強できなかったが、白黒反転で読めると頭痛の頻度が下がったので勉強時間も自然と増えた。 <高1>
- OCR機能で、授業中にもらったプリントを書類にして、すぐ使えることが良かった。リフローモードは、国語の教科書を読む時に、よく役立った。 <高1>
- 授業についていけるようになり、成績があがり、大学進学を叶えることができた。 <高3>
- 【保護者の声】
- 宿題にがんばって取り組むようになりました! 以前は読んだり書いたりする事を嫌がり、宿題をしない日もあったので、その分少し増えました。 <小3保護者>
- 一文字書くのも泣いて嫌がっていたのですが、デジタル教科書を使うようになり、自分から進んで漢字の宿題に取り組むようになって驚いています。(皆と比べると字の形は整っていませんが、少し上手くなりました)文章を読もうとするようになりました。 <小3保護者>
- 親子共々、PDF版拡大教科書に救われました。感謝しています。高校受験や大学受験、就職の心配も山ほどありますが、何とかなるかもしれないと希望が持てました。少しずつ勉強してUDブラウザの機能を上手に使えるようになりたいです。 <小3保護者>
- 補助具だけを使用していたときは、目や首の疲れがあり、勉強に対する意欲が低下していたため宿題のみの日が多かった。PDF版拡大図書を利用してかは音読を毎日するようになったり、学校での勉強がしやすくなったため家庭でも自主勉強に取り組むことが多くなった。 <小6保護者>
- 【教員の声】
- 見やすい大きさに拡大できることで、体への負担か減り、学習継続時間が延びた。
- 拡大教科書を使用していたころより内容を確認する作業が格段に速くなり、学習する意欲に繋がっていると感じる。
- 家庭での学習習慣がなかなか身につかなかったが、UDブラウザを用いれば、持ち帰りきれない教科書の内容を確認しながら、宿題等を進められるようで、学習を進めることができている。
- もともと意欲の高い児童であるが、効率的に学べるツールを手にできて、学習意欲もより高まっているように見受けられます。成績の向上にUDブラウザがかなり寄与していると思います。
- 学習意欲は格段に上がった。学習に向かい、学習内容が分かるようになって成績が上がり、さらに意欲も高まって、よいスパイラルになっている。
- UDブラウザやPDF版拡大図書ができて、子どもたちの学習環境が大きく変わり、とても学びやすくなりました。大きな文字サイズを必要とする盲学校の子から、一般校で学ぶ弱視生徒まで、UDブラウザを便利に使うことで効率的な学習ができています。本当にありがたいことだと常々感じています。
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